顧問社労士の部屋 建設専門の社労士が労働安全についてわかりやすく説明します。

長時間労働の根本的な問題

電通の女性社員が、長時間労働を苦に自殺し、過労死労災が認定され大きなニュースとなっています。長時間労働に対する規制や相談体制などが整ってきいるのにもかかわらず、このような事例が後を絶ちません。

過労死の問題が起こっている業界の多くがサービス業です。過労死では労災認定が行われますが、サービス業の労災保険料率は最も低く、皮肉なことに最も保険料率が高い建設業界では長時間労働を苦にした自殺はありません。建設業界は墜落・落下などもともと労災事故のリスクが高いので、労働安全衛生に対する意識が高いという特徴があります。逆に、農業、卸売業、サービス業といった業種は労働安全衛生の意識が低く、役所の対応も緩いです。

さて、サービス業の長時間労働問題ですが、サービス業は接客や介護など直接人に対してサービスするものと、広告・通信のように間接的に人に対してサービスするものに大きく分かれます。前者は時間・空間の制約を受けますが、後者は時間・空間の制約を受けません。時間・空間の制約を受けないということは、自由に時間が使えるという利点もありますが、逆にいつでもどこでも仕事をしなければならない状態を招きやすいという問題を抱えています。

仕事には納期があり、納期内に仕事を完成しなければなりません。これは会社として当然のことですが、仕事を行うのは会社の社員です。会社の責任者は仕事の完成に対する責任とともに、社員の労働時間を管理する責任があります。労働時間を管理できないなら、仕事は断るか、高い価格で請けるべきです。

電通はおそらく元請けだと思いますが、広告業や建設業などは重層的な下請け構造になっています。重層になればなるほど、中間マージンが抜かれ、仕事を請ける条件が下がっていきます。仕事の条件の低下は、そのまま労働条件の低下につながります。そして、発注者は相応の価格で仕事を発注したにもかかわらず、実際には発注者も想像できないような劣悪な労働条件で末端現場で仕事が行われることになるのです。

 

長時間労働を禁止する法律は現在ありません。私はそういった法律は作るべきではないと思うし、作ったとしても管理が難しいと思います。ここは経営者の良心、モラルで解決すべきだと考えています。そういう意味で、経営者は社会的な存在であり、社会的責任を持っていることを自覚した行動をとるべきです。

顧問社労士の部屋プロフィール

井上敬裕

井上敬裕 社会保険労務士・中小企業診断士

大田市場青果工場で約8年間工場長を務めた後独立。
工場の生産性・安全衛生管理と人事労務管理の両方をワンストップで行うことができる。フォークリフト講師の資格を持っている。